「過緊張」とは、仕事や試験などのストレスによる緊張で、過剰に交感神経が優位になってしまう状態です。
そのような人は、ストレスを感じる場面が過ぎても緊張状態が続き、
状況にかかわらず常に交感神経が高ぶるために、心身にさまざまな悪影響が及ぶ恐れがあります。
ここでは、過緊張が続いてしまったときに引き起こされる症状について解説します。
睡眠障害
過緊張が続くと最も出やすい症状が「睡眠障害」です。
本来リラックスしているはずの睡眠時にも交感神経が高ぶってしまうため、寝つきが悪い、眠りが浅くなる、
朝早く目覚めてしまうなど、不眠の症状が現れやすくなります。
また、睡眠の質が低下することで、眠気や疲労、気分の落ち込みなどを引き起こし、
日中のパフォーマンスに悪影響が出ることもある
頭痛・肩こり
交感神経が過剰に高ぶった状態が続くことで、筋肉がこわばり、頭痛や肩こりなどにつながってしまいます。
交感神経が常に高ぶっていると、筋肉を緩める時間がなくなり、身体全体が固くなります。
特に、こめかみ付近にある側頭筋や、肩甲骨あたりにある僧帽筋(そうぼうきん)といった筋肉がこわばりやすく、
頭痛や肩こりを引き起こしてしまうこともあります
冷え、疲労感
過緊張が続くと血行が悪くなり、手足の冷え、全身の疲労感につながります。
交感神経が高ぶった状態が続くと、皮膚の血管が収縮し血行が悪くなるため、
手足に冷えの症状が現れやすくなります。
さらに、血行不良は代謝の低下につながり、全身の筋肉や内臓などへ酸素や栄養がうまく行き渡らなくなるため、
全身にだるさや疲労感を感じることもあるでしょう
過緊張の原因
過緊張を引き起こす原因は、ストレスによる自律神経の乱れにあります。
交感神経と副交感神経からなる自律神経は、正常な状態であれば、
朝目覚めたときに覚醒をつかさどる交感神経が優位な状態に、就寝に向けて休息をつかさどる副交感神経が
優位な状態に切り替わっていきます。
しかし、過緊張が続くとそのバランスが崩れ、夜になっても交感神経が高ぶったままで、
副交感神経への切り替えがスムーズに行われなくなります。
こうした自律神経の乱れを引き起こす主たる要因は、日常にあふれるさまざまなストレスです
ストレスの種類
ストレスとは、「ストレッサー」といわれる「外部からの刺激」によって心身に「ストレス反応」が
出ている状態をいいます。
ストレッサーは、騒音や臭いといった物理的、あるいは化学的なものから、
職場や人間関係の問題といった「ライフイベント」といわれる心理社会的なものまで、
日常生活の至るところに潜んでいます。
仕事のちょっとしたミスや不安などのひとつひとつは小さな問題であるものの、
それが積み重なることで大きなストレスになっていきます。
このストレスを放置し蓄積させてしまうことが、過緊張の大きな原因になっています
ストレスの要因は
温度、気圧、騒音など
ウイルス、痛み、疾病など
アルコール、薬物、光化学スモッグ、大気汚染物質、臭いなど
ライフイベントでは
転居、死別、結婚、昇進、退職、事故、介護など
過緊張になりやすい人
過緊張になりやすい人には、大きく分けて3つの傾向が見られるといいます。
周囲の変化や刺激に敏感な人
このタイプの人は、常に緊張が解れず、自らストレスを溜め込みやすい心理状況をつくり出してしまう傾向があります。
周囲の変化や刺激に敏感で、繊細といわれるような人は、交感神経が高ぶった緊張した状態が続いてしまう
傾向にあります。
一方、楽観的でのんきな性格の人は、リラックスするのが上手で、ストレス状態が続かないことが多いため、
過緊張になりにくいです
長時間にわたり緊張状態が続く仕事をしている人
神経を使い続ける必要がある仕事や、責任が重い仕事をしている人も過緊張になりやすいといわれています。
繊細な感覚が要求される仕事や、多忙で気持ちを緩める時間がない仕事やポジションなど
長時間にわたって緊張状態を強いられている人は、どうしても日中の緊張した感覚を夜まで引きずってしまいます。
そのまま布団に入っても交感神経は高ぶったままなので、寝つきが悪くなり、睡眠の質も低下してしまいます。
睡眠の質が低下すると、身体も脳も休まらなくなり、自律神経の乱れを整えることができず、
結果、過緊張が助長される可能性があります
過度な疲れが続き、睡眠中にリラックスできない人
深夜まで仕事が続き帰宅後は寝室へ直行、入眠前の入浴やストレッチなどで身体もほぐさず、
疲労が蓄積している人も過緊張になりやすいといえます。
日中に緊張を強いられている人であっても、入浴などで緊張を緩め
リラックスして眠ることができれば問題はありません。
しかし、心身ともに疲れ、リラックスする余裕や時間もなく、ただ寝て起きるだけのような睡眠は、
翌日に緊張状態を持ち越してしまいます。その積み重ねが、過緊張へとつながってしまいます。
過緊張が引き起こす病気
過緊張が続き自律神経も乱れたまま放っておくと、以下のようなさまざまな心身の不調につながってしまいます。
症状や環境に過緊張の不安を感じる方は、早めに受診しましょう。
うつ病
「うつ病」の症状が発症するメカニズムは過緊張と深く関係しています。
うつ病は自律神経が乱れることがきっかけで起こることがあります。
ストレスからくる過緊張は、憂鬱感や疲労感、日中の強い眠気を継続的に引き起こすなど
自律神経のバランスを整えることを難しくしてしまうため、うつ病発症の引き金になることが少なくありません
パニック症
過緊張が続き、さらに進行して症状が酷くなってしまうと、パニック症を誘発する恐れがあります。
過緊張になると交感神経が高ぶって脈拍が速くなるため、息苦しさや息切れを感じるほか
心臓の鼓動が速くなったり、身体が震えたりすることがあります。
この状態が悪化すると、急激に不安や恐怖を感じる『パニック症』に発展する可能性があります
胃潰瘍
過緊張は、常に心身にストレスを与えているため、胃に大きな負担を与えてしまうこともあります。
「過緊張が続くと、ストレスによって胃粘膜が刺激され続け、胃潰瘍になることがあります。
重度の場合は、胃壁が大きくえぐれてしまったり穴が開いたりします。
日常生活で緊張状態が続き、胃に違和感がある場合、放置せずに専門医に相談ですね
高血圧
交感神経が高ぶった状態である過緊張を放置すると、血管が収縮し、血圧の上昇につながることがあります。
通常であれば、血圧は一時的に高くなっても自然と正常な値に戻ります。
しかし、過緊張が続くと血圧が自然に下がらず、高血圧が常態化してしまいます。
高血圧が続くと、血管に大きな負担がかかり、脳梗塞や心筋梗塞といった死亡リスクの高い疾患につながる
恐れもあります
気管支喘息
交感神経が高ぶった状態の過緊張は、喘息発作につながるケースもあります。
交感神経が高ぶった状態だと、気管支が収縮して喘息の発作が起きやすくなります。
特に子どもの場合、精神的な緊張から小児喘息を引き起こすケースがあります
過緊張性発声障害
子どもの場合、過緊張によって「喋り」に悪影響が出ることがあります。
「過緊張で舌の奥に力が入りすぎてしまい、声が小さくなる、しどろもどろになる、
ろれつが回らなくなるなどの症状が現れることがあります。
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